2024年1月16日から、admobでEEA(欧州経済領域)に広告を配信するためには、GDPRに対応した同意フォームの実装が必要になる
これはadmobに用意されているので、開発者が新しく作る必要はない
フォームには個人情報が広告の配信に使われることなどが表記されており、ユーザーが同意するかどうかを選択し、同意が得られた場合には広告が配信される
【フォームのサンプル】
そして得られない場合には「制限広告」が配信される仕組みになっている
…のだがこれが問題で、制限広告では実際には何も配信されない
だからユーザーの同意が得られない場合、広告が表示されなくなってしまうのだ
制限広告に出稿する広告主が存在しないので在庫がない、ということなのだろう
iOSのATTは同意しないと非パーソナライズ広告が表示され、単価はかなり下がるが、収益自体は得られるようになっている
しかしadmobのGDPRフォームの場合は、同意が得られないと収益が0になる
これは大きな広告収益の減少につながる可能性があるので、googleのフォーラムでもめているのを見かけたことがある
果たしてどうなるのだろうか、と思いつつ実装を進めてみた
すると85%程度のユーザーが同意する結果となったので、EEAからの収益減は15%でおさまるようだ
私のアプリの場合、EEAのユーザーが25%なので、全体からみれば3.75%の収益減となる
これならばさほど影響がないレベルだと言える
実際には選択肢を選ばずに閉じたユーザーもいて(8%程度)、アプリの使用をやめてしまった可能性もある
そのあたりも考慮するともう少し減るかもしれないが、それほどの痛手にはならなさそうだ
この高い同意率には理由があり、admobのフォームでは「同意しない」ボタンを非表示にできるようになっている
この場合、ユーザーが個人情報の取得を拒否する場合には、「オプションを管理」を開き、設定を変えないまま「選択を決定」ボタンを押す必要があるという、ややわかりにくい仕様になる
このためにユーザーが結果として同意している、ということが起きているのではないかと考えられる
おそらく「同意しない」ボタンを表示すれば同意率が激減するだろう
(10〜20%程度になるのではないかと思う)
ユーザーに対しては不親切となるが、アプリ開発者にとっては有利な設定も選べるようになっている
これが85%の高い同意率が得られている原因のようだ
この設定が法的に問題ないかどうかは開発者が自分で判断するべきこととなっている
フォームに記載されている内容をよく読めば同意しないことを選べるようになっているが、これでいいのかどうかには疑問を感じるところもある
はじめから「同意しない」ボタンを表示させておけば、法的に問題だとされる可能性は、おそらくなくなるだろう
しかし同意率は大きく減少し、EEAからの収益はほとんど得られなくなる
このあたりはトレードオフの関係にあるので、開発者が自分で判断して決める必要がある
正確に判断するためには、専門家への相談も必要になるかもしれない
と、このようにデリケートな問題なので、いっそのことばっさりとEEAへのアプリの配信はやめてしまうという手もある
私も今回の対応で、EEAからの収益が少ないアプリはそちらでの配信を停止し、広告も自分で設定してEEAでは非表示にしてしまうつもりだ
これはiOSのアプリで、ATTのフォームの後にGDPRのフォームを表示することになるが、これをやるとアプリの審査でリジェクトされることがあるという話も出ている
それならいっそEEAは切ってしまおうという判断になった
もとからiOSはEEAでのシェアが少なめなので、対応するメリットが乏しいという理由もある
こういったところに神経を使うよりも、アプリの制作と、制限のない地域への配信に専念した方がいいようにも思える
しかし広告配信への制限をかける地域はじわじわと増えているので、対応しないでいるとビジネスをできる領域がどんどんせばまってしまうかもしれない
いずれにしても、国際的に広告モデルのアプリを配信して収益を得るというビジネスは、だんだんとやりにくくなってきているのは確かなようだ
こちらはこちらで抑えつつ、ビジネスの多様化も進めていった方がよい情勢なのだと言える
アプリだけしかやっていない、という人はあまりいないだろうけれども