天皇家の家紋・菊の御紋の由来について

天皇家の紋章は「菊の御紋」ですが、鎌倉時代に後鳥羽ごとば上皇が用いたのが、その起源であるとされています。

菊花紋章

【天皇家の菊花紋章】

上皇は鍛冶を好んでおり、全国から名工を集めて仕えさせ、常に身近なところで刀を作らせていました。

そして上皇は、時に自ら刀を打つほどに熱心で、自作の刀に菊の銘を付け、「上皇が作ったものである」という証明にしました。

こうした事例が皇室において、菊の紋が使用された始まりとなっています。

菊を用いたのは、上皇が菊の姿や形を大変に好んでいたからだとされています。

倒幕運動と菊の御紋

上皇が刀作りに熱心だったのは、朝廷の武力を高めようとする意識の表れでした。

上皇は密かに、鎌倉幕府を取りしきる北条氏の打倒を計画しており、自分に味方する者たちに刀を贈り、官兵の記章として用いることにします。

つまり菊紋は、元々は軍事的な意図があって広まったもので、皇室だけがそれを身につけていたわけではありませんでした。

鎌倉時代の頃から、武家の者たちが家紋を作って家臣たちに与え、それを象徴として党派を形勢するようになっています。

上皇は同じ事をして、朝廷派の武家を増やそうとする意図があったのでしょう。

当時、朝廷は鎌倉幕府の勃興によって衰退期を迎えつつあり、上皇はこれを挽回しようと画策していました。

その活動の象徴として菊の紋が用いられ、その後、皇室の御紋章として定着していくことになります。

なお、この倒幕運動は失敗し、上皇は「承久じょうきゅうの乱」で鎌倉幕府の軍勢に敗れ、隠岐おきに配流される結果となりました。

これが朝廷と幕府の権力争いの発端となり、以後600年以上に渡り、断続的に抗争が行われることになります。

後醍醐天皇が菊桐の紋を用いる

やがて鎌倉時代の末期になると、後醍醐ごだいご天皇が登場しました。

後醍醐天皇は自ら親政を行うことを望み、鎌倉幕府の打倒を計画します。

後醍醐天皇はこの時、菊の紋に加えて「桐の紋」も使用するようになりました。

【五七桐紋】

このことから二つを合わせ、「菊桐きくきりの紋」と呼ばれるようになります。

桐の紋は平安時代の頃から、天皇の衣装に用いられていたものです。

桐は鳳凰ほうおうがその上にとまる神聖な植物だとされており、その縁起のよさから皇室で好まれたようです。

後醍醐天皇はやがて、鎌倉幕府の支配から離脱し、自分に味方した足利尊氏あしかがたかうじに菊桐の紋の使用を許可しました。

足利氏の家紋が桐なのはこのためです。

そして寺院の門跡や臣下たちにも同様に与えていき、同じ集団に属しているのだ、という意識を高めさせました。

後鳥羽上皇の時と同じく、菊桐の紋は幕府を打倒するためのシンボルとして用いられていた、ということになります。

足利氏の他に、九州の菊池氏も後醍醐天皇から紋を与えられており、戦国時代においては、中国地方の覇者・毛利元就もとなりも使用を許可されています。

これは元就が、正親町おおぎまち天皇が予算不足のため、即位の儀を実施できずに困っていたときに、その費用を援助したためでした。

このようにして菊桐の紋は、皇室とつながりの深い武家の証として用いられるようになったのです。

なお、この時の後醍醐天皇の倒幕運動は、鎌倉幕府の打倒には成功したものの、足利尊氏が新たに室町幕府を作ったことによって、最終的には失敗に終わっています。

当時は既に、武家の勢力は日本中に浸透しており、北条氏を倒しただけでは、朝廷に権勢は戻らなかったのです。

徳川家康は授与を断る

こうして後醍醐天皇が足利尊氏に与えたことが先例となり、以後は他の武家の棟梁たちにも、桐の紋が与えられています。

戦国時代の混乱をしずめた織田信長や豊臣秀吉が使用を許され、そして徳川家康にも同じ話が持ちかけられました。

しかし、家康は「菊桐の御紋は尊いものですが、後醍醐天皇の御代みよに足利尊氏に与えられ、その一族がこれを用いてきました。けれど、今ではもう足利氏は衰えており、徳川としては、その前例を追うことが望ましいとは思えません」と返事をして断っています。

つまり「既に衰退した一族のまねをさせられるのはごめんである」と言ったわけで、これには家康の政治的な意図が隠されていました。

【次のページに続く▼】

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