曹洪は曹操や曹丕に仕えた武将です。
際だった働きはなかったものの、各地の戦いで安定して戦果をあげました。
やがて魏の高官に登りつめるのですが、曹洪は蓄財を好んでおり、それでいてケチだという性格でした。
そのせいで皇帝となった曹丕に処刑されそうになり、魏の初期に大きな騒動を起こすことになります。
この文章では、そんな曹洪の生涯を書いています。
【曹洪の肖像画】
沛国に生まれる
曹洪は字を子廉といい、曹操の従弟です。
沛国譙県の出身で、生年は不明となっています。
曹洪の叔父は曹鼎といい、尚書令という高官の地位にありました。
そして曹洪を蘄春県の長に任じています。
このため、曹洪は曹操に仕える前から、それなりに身分を得ていたのでした。
曹操の危機を救う
やがて189年に、曹操が董卓打倒のために旗揚げすると、曹洪はこれに参加します。
その後、袁紹を中心に反董卓連合軍が結成されますが、彼らは董卓軍を恐れて積極的に攻撃しようとはしませんでした。
このため、業を煮やした曹操は単独で突出し、滎陽で董卓軍の徐栄と戦います。
しかしそこで徐栄にさんざんに打ち破られ、曹操は乗っていた馬を失いました。
敵の追撃は激しく、曹操は命の危険にさらされます。
この時に曹洪は馬を降り、曹操に譲り渡そうとしました。
曹操はこれを断りましたが、曹洪は「天下に私がいなくても差し支えはありませんが、あなたがいなければ大変なことになります」と言って、曹操を馬に乗らせます。
そして曹洪は徒歩で共をし、汴水のほとりにまで到着しました。
しかし汴水は水かさが深くなっており、とても渡ることはできない状態でした。
このため、曹洪は岸辺をめぐって船を探し、曹操とともに河を渡り、なんとか故郷の譙県にまでたどり着きました。
こうして曹洪は曹操の危機を救い、自分の命をかえりみない、忠実な働きを見せたのでした。
兵士を募集するも、反乱を起こされる
その後、曹洪は私兵千人を率いて、かねてより親しかった揚州刺史(長官)の陳温を訪ねました。
そして廬江の精鋭二千人を手に入れます。
さらに丹楊にも行き、数千人を手に入れると、龍亢で曹操と合流しました。
しかしこのとき集めた兵士たちは、やがて反乱を起こし、曹操の軍幕が襲撃される騒ぎとなります。
曹操はこの時、自ら数十人を斬り倒したので、残りの者たちは恐れて道を開けました。
こうして曹操や曹洪は脱出し、危ういところを切り抜けています。
曹操も旗揚げの当初は、このような苦難に次々と出会っていたのでした。
兗州を奪還する
その後、曹操は兗州刺史となって根拠地を手に入れます。
それからしばらくすると、父・曹嵩の殺害に関与した陶謙を攻めるため、徐州に遠征をしました。
すると兗州の留守を預かっていた張邈と陳宮が曹操を裏切り、呂布を引き込んで各地を占拠します。
この危機的な状況において、曹洪は先行して兗州に戻り、呂布に取られる前に東平や范を占拠しました。
これによって、曹操は兗州を全て失う危機から逃れています。
当時、兗州は飢饉にみまわれていましたので、曹洪は各地で食糧を集めて本軍に送り、食糧不足を乗り切るのに役立てています。
その後、曹操が呂布を破って敗走させると、曹洪は反乱にくみした十の県を攻め落とし、兗州奪還に活躍しました。
身分が向上する
曹操は兗州の情勢が落ち着くと、それまでの曹洪の功績を評価して、鷹揚校尉に任命し、ついで楊武中郎将に昇進させました。
これらは数千単位で軍兵を率いる、指揮官の身分です。
そして曹操が献帝を許都に迎えると、諫議大夫の官位を授与されました。
これは皇帝のあやまりをいさめ、国家の利害を説く役目でした。
このようにして、曹洪は順調に身分が高まっていきます。
曹操と財産が同じだった
曹操はやがて、司空という大臣の地位につきましたが、自らが範を示すために、財産を地元の県令に調査させ、徴税を公正に行おうとしました。
すると譙の県令は、曹操の家と曹洪の家の財産が、同等であると報告しました。
曹操は「わしの財産が子廉(曹洪)と同じはずがあるか」と言いましたが、曹洪はそれほどに裕福だったのでした。
もともと家が豊かだった上に、曹洪自身も蓄財に励んでいたためです。
それ自体には問題ありませんが、曹洪は金銭欲が募るあまりにだんだんとケチになっていき、それがやがて、災いを呼び寄せることになります。
各地で活躍する
曹洪はその後、曹操と袁紹が争った官渡の戦いで、祝臂という武将を打ち破ります。
また、官渡の守備についていた時には、袁紹軍の張郃や高覧の攻撃を防ぐなど、堅実に武功を立てています。
その後、河北を征した曹操が、南に目を向けるようになると、別働隊を率いて荊州に進軍し、舞陽や博望など、四つの地点で劉表軍の武将を撃破しました。
これらの手柄によって厲鋒将軍に昇進し、国明亭候の爵位も与えられます。
ここまでの曹洪は、順調に生涯を送っていたのだと言えます。
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