糜竺 故郷と捨てて劉備に従うも、弟の糜芳に裏切られた忠臣

糜竺びじくは徐州の資産家の家に生まれ、その人柄や能力も高く評価されていた人物です。

徐州刺史・陶謙とうけんの副官を務めており、彼が亡くなる際に、劉備に徐州を統治するよう要請しました。

それ以後は窮地に陥った劉備に多額の援助をし、妹を嫁がせるなど、積極的に支援を行っています。

曹操からも高く評価されていたのですが、劉備が徐州を去る際には、故郷も地位も捨てて彼に従いました。

この文章では、そんな糜竺について書いています。

東海郡に生まれる

糜竺はあざな子仲しちゅうといい、徐州の東海郡県の出身でした。

生年は不明となっています。

先祖代々、利殖に努めてきた家だったので、糜竺の代には小作人が一万を数え、莫大な資産を所有していました。

そして糜竺自身は清廉で、誠実な性格の持ち主でした。

天の使いと行き会った話

以下は『捜神そうしん記』という、小説集に載っている糜竺の話です。

糜竺が遠出をしてから家に帰る途中で、道ばたで一人の婦人を見かけました。

彼女は糜竺に馬車に乗せて欲しいと頼んだので、乗せてやります。

それから数里ほど進むと、婦人はお礼を言って立ち去りました。

そしてその時に「私は天の使いです。これから東海の糜竺の家を焼きに行くところだったのですが、あなたが車に乗せてくれたので、お話しました」と言います。

糜竺は驚いて、家を焼かないように頼みました。

すると婦人は「焼かないわけにはいかないのです。だからあなたは馬を走らせ、私より先にお戻りなさい。私はゆっくりと参ります。火事は真昼に起こるはずです」と言います。

このため、糜竺は急いで家に戻り、財宝を外に持ち出させると、果たして婦人が言った通り、真昼に大火が発生しました。

これが史実だったわけではないでしょうが、こういった話が語られたことから、糜竺が財産家だったことと、親切な性格だったことは、世に広く知られていたようです。

陶謙の別駕従事となる

黄巾の乱が発生して世が乱れるようになると、剛直で知られる陶謙が徐州刺史(長官)に任命されました。

そして陶謙は糜竺を別駕べつが従事じゅうじ(刺史の側近)に任命します。

糜竺は単にお金持ちなだけではなく、文武に通じた人物でもあったので、こうして地位を得ることになったのでした。

劉備を迎えに行く

やがて戦乱の時代になると、陶謙は曹操と敵対し、徐州に攻めこまれます。

そして各地で大敗し、危機に陥りました。

陶謙が周辺の勢力に救援を求めると、劉備がやってきて曹操と戦います。

このため、陶謙は劉備におおいに感謝しました。

間もなく陶謙は病に倒れたのですが、その際に糜竺を呼び寄せ「劉備でなければこの州を安定させることはできない」と伝え、彼に徐州を任せようとしました。

陶謙が亡くなると、糜竺は州民を引きつれて劉備に会い、徐州を統治することを求めます。

劉備は遠慮して引き受けなかったのですが、有力者である陳登の説得を何度も受け、ついに徐州を統治することを決意しました。

こうして糜竺と劉備の間に、つながりが発生します。

糜竺は単に任務として関わっただけでなく、個人的に劉備への好意を持つようになりました。

そしてこの後は生涯を通し、彼についていくことになります。

劉備に多額の援助を与える

やがて徐州には、南の揚州から袁術が攻めこんで来ました。

劉備がこれを迎撃する間に、徐州にいた呂布が裏切り、州都の下邳かひを占拠してしまいます。

劉備は妻子を捕らえられ、拠点を失って窮地に陥りました。

劉備が広陵郡の海西に軍勢を移動させると、糜竺は妹を劉備に嫁がせ、二千人の奴僕ぬぼくと、金銀を提供して軍費をまかないました。

劉備は手勢を養えないほどに困窮していましたが、この糜竺の援助によって立ち直っています。

支援の手厚い内容からして、糜竺は劉備に、相当な思い入れを持っていたことがわかります。

【糜竺に大変に尽くされた劉備】

曹操の推薦を受ける

やがて曹操が介入し、劉備を支援して呂布を撃破すると、徐州を支配するようになります。

すると曹操は糜竺を偏将軍に任命し、軍勢を率いさせようとしました。

さらに徐州の治安が乱れていたので、新たにえい郡を設けて糜竺を太守に任命しようともします。

曹操が糜竺を推薦した文書が残っており、それには以下のように記されていました。

「泰山郡は広大で、昔から乱暴者が多いところです。

一時的な処置として、五県を分離して贏郡をたて、清廉な官吏を厳選して太守にするのがよろしいかと存じます。

偏将軍の糜竺は普段から誠実で、文武ともに明らかですので、贏郡太守に任命し、官民を慰撫することを願い申し上げます」

このように、糜竺は曹操からも高く評価された人物だったのでした。

【次のページに続く▼】

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