「治世の能臣、乱世の奸雄」と曹操が評されたワケ

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曹操そうそうは若い頃に「治世の能臣、乱世の奸雄かんゆう」だと評されています。

これは「世が平和に収まっている時は有能な臣下として働くが、乱世になるとずる賢い英雄になるだろう」という意味です。

褒めているのか、けなしているのか、微妙な印象を受ける評価です。

どうしてこのような評が贈られ、現代にも伝わったのか、曹操の若き日の姿を紹介しつつ、書いてみようと思います。

【曹操の肖像画】

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初めは誰にも評価されていなかった

曹操は若い頃、鷹を飛ばし犬を走らせ、狩りをするのが大好きで、際限もなく遊蕩に耽っていました。

そして男だて気取りで好き放題にふるまい、品行がよくなかったので、世間には曹操を評価する者は、誰もいませんでした。

端的に言えば、不良少年だと見なされていたのです。

叔父を騙す

そのような曹操のふるまいを叔父がみとがめ、曹操の祖父・曹嵩そうすうに告げ口をしました。

曹操はこれを厄介に感じ、一計を案じます。

ある日、曹操は道で叔父に出会ったときに、わざと表情を崩し、口をねじ曲げて見せました。

叔父が不審に思い、曹操に何があったのかをたずねます。

すると曹操は「突然、ひどい顔面の麻痺にかかってしまいまして」と答えました。

叔父がそれを曹嵩に知らせたので、曹嵩は驚いて曹操を呼び出します。

すると曹操の口は元に戻っていました。

曹嵩は「叔父さんはお前が麻痺の病にかかったと言っていたが、もう治ったのかね?」とたずねます。

「麻痺になんてかかっていませんよ。叔父さんは私をお気に召さないので、でまかせを言われたのでしょう」と、曹操はぬけぬけと答えました。

すると曹嵩は疑念を抱くようになり、以後は叔父が曹操について何かを知らせても、信用しなくなります。

このために曹操はますます好き勝手にふるまうことができるようになったのでした。

この逸話には、曹操の策に巧みなところと、悪賢さが表されています。

しかし人を騙すのが得意だということは、それだけ戦いに強いということでもあり、後に示す軍事の才能を、すでに発揮していたのだとも言えるでしょう。

橋玄に評価される

そんな曹操を、橋玄きょうげんという人物が早いうちから見いだし、高い評価を与えました。

橋玄は剛毅かつ果断な性格で知られ、太尉たいい(国防大臣)の地位にまで昇った人物です。

それでいて清廉で、かつ謙虚な態度を取っていたことから、世間から高く評価され、名士として知られていました。

橋玄は曹操に会うと、「わしはずいぶんと天下の名士に会ってきたが、君のような者は初めてだ。君は自分を大切にするといい。わしは年をとったから、妻子のことをよろしく頼みたいものだ」と告げました。

またある時には、「天下はまさに乱れようとしている。一世を風靡する才能がなければ、救済できないだろう。乱世を鎮めることができるのは曹操、君かもしれない」とも述べています。

こうして橋玄に高く評価されたことから、曹操への評判は不良少年から、見込みのある若者へと変わっていきます。

許子将に会う

こうして曹操はいくらか名を知られるようになりましたが、橋玄は「君にはまだ名声が足りない。許子将きょししょうと付き合うといいだろう」と勧めました。

許子将は当時、人物の評論家として知られており、「彼に評価された者は出世し、そうでないものは没落する」と言われたほどに、大きな影響力を持っていました。

このため、袁紹えんしょうは低く評価されることを恐れて許子将に会わないようにしていた、という逸話があります。

橋玄は曹操であれば、許子将もその才能を認めて評価するに違いない、と判断したのでしょう。

そして曹操が会いに行くと、はたして許子将は曹操のことを気に入り、親しく付き合うようになります。

これによって、曹操の名はさらに広く知られるようになりました。

このころは人物評価が盛んに行われており、名士に称賛されることで、若者は世間に名を知られ、出世の糸口をつかみました。

このため、許子将に気に入られたのは、曹操にとって大きな意味を持っていました。

治世の能臣、乱世の奸雄

この許子将が曹操を評した言葉が、「君は治世の能臣で、乱世の奸雄だ」というものです。

橋玄の評と共通しているのは、曹操は乱世に向いた人間だ、ということです。

そして曹操が誕生し、成長する時期に後漢は衰えていき、戦乱の時代が近づいてきます。

それゆえに曹操は活躍ができましたし、橋玄は曹操に期待をしたのでしょう。

ちなみに許子将の評は「君は平和な世であれば乱賊となり、乱世ならば英雄になるだろう」だった、とも言われています。

【次のページに続く▼】

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