「治世の能臣、乱世の奸雄」と曹操が評されたワケ

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曹操の述懐

曹操は郷里に戻ると、春と夏は書物を読み、秋と冬は狩猟に出かけ、悠々自適の生活を送ります。

曹操は後に、この時期のことを、次のように述べています。

「済南に在住したとき、凶悪な者や汚濁に満ちた者たちを排除し、公平に官吏の登用を行ったが、それが宦官たちの意に逆らうことになった。

権力者たちを怒らせたため、家に災難を招くことが心配になり、病を理由に帰郷した。

官を離れた時はまだ若く、同じ年に推挙を受けた者の中には、五十歳になりながら、老人として扱われていなかった例があった。

これから二十年が経過し、天下が澄みわたるのを待っても、やっと同期の年配者と同じ年齢になるに過ぎない。

それゆえ郷里に帰り、書斎を建て、秋と夏は読書に、冬と春は狩猟をして過ごしたいと思った。

低地を求め、泥水の中に自分を隠すようにして、客の訪問も断ち切るつもりだった」

このように、曹操は世間との交渉を断って、場合によっては二十年も隠遁するつもりだったのでした。

それほどに、曹操は後漢の現状に絶望していたのでしょう。

再び仕官し、やがて勢力をおおいに伸ばす

しかし、曹操の隠遁は長く続きませんでした。

曹操は大将軍の何進かしんに召かれ、再び朝廷に仕えるようになります。

何進は宦官たちを敵視し、彼らを除こうとしていましたので、曹操は協力することにしたのでした。

しかし、やがて何進は宦官との政争の渦中で暗殺されてしまいます。

そうなると、何進にかわって董卓とうたくが台頭し、朝廷を支配するようになりました。

董卓は暴政を行い、後漢はますます衰退します。

すると曹操は都を脱して兵を集め、董卓打倒のための連合軍に参加しました。

以後は各地に群雄が割拠し、勢力争いを繰り広げるようになります。

曹操はその渦中で、呂布りょふや袁紹といった強敵に勝利を収め、やがて中国大陸の北半分を制覇しました。

この結果を見るに、平和なら有能な臣下となり、乱世なら奸雄になる、という許子将の評価は、概ね当たっていたことになります。

なぜ「奸雄」だったのか

後に曹操の息子の曹丕そうひが、後漢から皇位を奪ったことから、曹氏は後世から非難を受けることが多くなっています。

既存の王朝がなるべく長く存続するべきである、という保守的な思想の持ち主からすると、曹操や曹丕は悪人だという評価になるからです。

曹操は勢力を伸ばしていく過程で、後漢の皇帝を推戴することで、自らの行いの正当性を確保しました。

しかし、自身の勢力が強くなると、後漢に取ってかわり、曹丕の代に王朝が開かれます。

そのような経緯は、ずる賢いふるまいだと見られても、おかしくありません。

そういった事情があったため、「曹操は奸雄である」という許子将の評が信憑性を帯び、長く語り継がれることになったのだと思われます。

許子将は、曹操は機会があれば後漢から権力を奪ってしまうような人間だということを、見抜いていたのでしょう。

曹操の毀誉褒貶が激しいわけ

結局のところ、魏王朝は中国を統一できず、後継のしん王朝も長く続かなかったことから、曹操は適切な評価を受けられづらい立場に置かれました。

三国志の正史においては、曹操は「破格の英傑」だとされていますが、その評はさほど影響を及ぼさなかったようです。
(この評は晋代に書かれましたので、逆に称賛されすぎているきらいがあります)

それどころか、晋と敵対する勢力から、曹操は口汚い批判を浴びることになります。

晋の母体になったのは、曹操が興した魏でしたので、その権力の正当性を失わせるためには、「曹操は極悪人だった」と喧伝するのが、有効な戦術だったのでした。

曹操への悪評が多いのは、そういった歴史の流れが影響しています。

曹操は安易に、過剰に人の命を奪うことが多く、悪人と呼べる面もありましたが(たとえば曹操は、友人の家族を疑って皆殺しにしたり、仲が悪かった孔融の幼い子どもたちまで、何の罪もないのに処刑したりしています)、一方で統治や軍事に秀で、世の混乱を収拾する実力があったのも確かでした。

歴史上の人物に対する評価は、なかなか適切には行われないものですが、とりわけ曹操の場合は、毀誉褒貶が激しくなっています。

それは複雑な歴史の流れと、曹操自身の善悪が混在した人格が、成さしめせたものだと言えるでしょう。

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