「人中の呂布、馬中の赤兎」とは

人中の呂布、馬中の赤兎せきととは、「人の中には呂布という傑出した勇者がおり、馬の中には赤兎という天下の名馬がいる」という意味です。

呂布は三国志に登場する抜群に強い武将で、特に馬に乗って戦うのが得意でした。

そして赤兎は一日に千里(400km)を駆けると言われた名馬です。

赤兎という名前は「毛が赤く、ウサギのように素早く走る馬」を意味しています。

呂布は赤兎にまたがって戦い、大活躍をしたのですが、その時に「人中の呂布、馬中の赤兎」と褒めそやされたのでした。

この言葉は『そうまん伝』という本に書かれています。


【最強とうたわれた呂布】

言葉が生まれたきっかけ

群雄のひとりである袁紹えんしょうはあるとき、黒山賊という敵と戦っていました。

黒山賊は1万の歩兵と数千の騎兵を抱える精強な集団で、袁紹は苦戦を強いられます。

そこに呂布がやってきて、袁紹に味方しました。

そして側近の成廉せいれん魏越ぎえつといった武人たちとともに、数百の騎兵を率いて戦場に向かいます。

呂布は自ら先頭に立って黒山賊の陣営に乗り込むと、たった数十分の一の戦力で、彼らをけちらして圧倒します。

呂布は連日に渡って攻撃をしかけ続け、その結果、数で勝っていた黒山賊はあえなく敗北し、撤退せざるを得なくなりました。

呂布はかねてよりその強さで知られる武将でしたが、この図抜けた戦功によって、改めて「人中の呂布、馬中の赤兎」と称賛されたのでした。

三国志演義における赤兎馬

正史で赤兎馬が登場するのはここだけなのですが、創作である『三国志演義』においては、役割がずいぶんと増えています。

最初は暴君として知られる董卓が所有しており、呂布に寝返りを促すために、赤兎馬を贈りました。

その後、呂布は董卓を養父と慕うも、やがて殺害して逃亡し、袁紹を頼ります。

この時の活躍が「人中の呂布」の称賛につながっています。

やがて呂布は袁紹とも仲違いをして離脱し、えん州や徐州を争って曹操と戦いますが、敗北して処刑されました。

こうして赤兎馬は曹操の手に移るものの、気性が荒くて誰も乗りこなせませんでした。

呂布を倒した後、徐州は曹操が支配しましたが、しばらくして劉備に奪われたので、曹操はこれを討伐します。

その際に劉備の部下で、勇猛で知られる関羽を捕らえると、曹操は彼を臣従させるため、歓心を引こうと思って赤兎馬を贈ります。

それまで関羽は他の贈り物には目もくれなかったのですが、赤兎馬だけは喜びました。

「赤兎馬は一日に千里を駆けるので、離れ離れになっている主君・劉備の元に駆けつけるのが容易になる」というのが理由でした。

これを聞いた曹操は贈ったことを後悔するも、後の祭りだった、というのが演義における筋立てになっています。


【赤兎馬にまたがる関羽】

その後、関羽は赤兎馬に乗って劉備の元に戻り、曹操と敵対しますが、孫権にだまし討ちにあい、処刑されました。

この時に関羽を生け捕りにした孫権の部下・馬忠に赤兎馬が与えられましたが、まぐさを食べなくなり、関羽に殉じるようにして死んだ、というのが赤兎馬の最期になっています。

赤兎は実在の名馬

このように赤兎馬は、演義では物語の流れの一端を担う、重要な役割を果たしています。

呂布と関羽という、優れた二人の武将の乗馬となるも、二人とも非業の死を遂げ、赤兎もまた後を追うようにして死んだのです。

こうなると創作上の存在のようにも見えますが、『三国志』と『後漢書』という二つの信頼性の高い史書に名前が書かれていることから、実在の名馬だと言えます。

この時代の馬の名前が伝わっているのは、かなり珍しいことですので、呂布と赤兎の組み合わせは、よほどに強く当時の人々の印象に残ったのでしょう。

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