周瑜 赤壁で曹操を破り、呉の隆盛を導いた名将の生涯

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劉備を警戒する

周瑜は赤壁や荊州争奪戦で劉備とともに戦った結果、彼のことを警戒するようになります。

劉備が呉までやってきて、孫権と面会した後で、周瑜は次のように提言をしました。

「劉備は英雄としての資質を備え、関羽や張飛といった勇猛な武将たちを抱えていますので、いつまでも他人の命令には従っていないでしょう。

将来を見越して、劉備を呉に留め置き、盛大な宮殿を建ててそこに住まわせ、美女や宝物を集めて耳目を楽しませ、骨抜きにしましょう。

その上で関羽や張飛を別々の場所に配置し、私のような呉の将が用いれば、天下統一も夢ではありません。

もしも劉備に土地を与えて基盤を用意してやれば、龍が雨を受けて天に昇るがごとく、いつまでも池の中にはとどまっていないでしょう」

この周瑜の見通しは、実に正しいものでした。

しかし孫権は、「曹操に対抗するためには、なるべく多くの英雄を傘下に収めていかねばならない」と述べ、これには同意しませんでした。

また、劉備はどんな手段を用いても、結局はいつまでも自分に従っていないだろう、とも考えていました。

このあたりの様子を見るに、孫権と劉備の関係は、この時点で既に緊張をはらんだものだったことがうかがえます。

益州奪取を計画する

この頃、益州は劉璋りゅうしょうが支配していましたが、何度か反乱が起き、漢中の張魯ちょうろにも背かれていました。

このために益州の情勢は不安定なものとなっています。

周瑜はこれを利用し、荊州南部に続いて益州も支配下に置き、曹操に対抗することを計画します。

周瑜は孫権に目通りし、曹操は赤壁の大敗によって足下が動揺しており、すぐに動ける状態ではないことを指摘しました。

なので自分が孫瑜そんゆ(孫権の叔父)とともに軍を進めて益州を奪い、張魯を討って漢中をも併呑してはどうでしょうか、と提案します。

そして孫瑜が益州を統治し、涼州の馬超と同盟を結びます。

その上で周瑜は荊州に戻り、孫権とともに北上すれば、曹操を討つことも可能になる、というのが周瑜がその胸に抱いた戦略案でした。

揚州と荊州と益州を合わせ、涼州をも味方につければ、南東、南、南西、西の四方向から曹操を攻撃することが可能となります。

そうなれば、いくら曹操が大軍を持っていても、打ち破れる可能性が生じます。

これは大陸全土の状況を見きわめた上で成り立つ、優れた戦略案だったと言えます。

またこの策によって、劉備につけこむ隙を与えないようにしようとする意図もあったでしょう。

出陣の準備をするも、重病にかかって死去する

孫権はこの案に同意し、周瑜に出陣の許可を与えました。

これを受け、周瑜は江陵に戻って遠征の準備を開始しましたが、間もなく重病にかかってしまいます。

そして治療を受けたものの、一向に回復することができず、そのままあえなく死去しました。

この時、周瑜はまだ36才でしたが、曹仁から重傷を受けた後も、休まずに働き続けていましたので、その無理がたたったのでしょう。

結局のところ、益州と漢中を制し、馬超を従えたのは、周瑜が警戒していた劉備でした。

周瑜の遺言

周瑜は臨終に際し、次のように遺言をしています。

「ただいま、天下は多事で戦いが盛んになっていますが、私はこのことを日々憂慮しています。

どうか陛下は、事が起こる前に先んじて配慮をなされ、心を楽しませるのは、みなが安心してからにしていただきますように。

いま、荊州において曹操と敵対している上に、劉備は公安という近辺にいます。

国境はまだ不安定で確立されておらず、民衆たちは十分に心を寄せていません。

ですので、どうか良将を選び出し、鎮撫の任に当たらせてください。

魯粛は知略に優れており、この任に十分に耐えられるでしょう。

私の後は彼に引き継がせられますように、お願いいたします。

そうしていただければ、私は落命するに際しても、何の心残りもありません」

孫権はこれを受け入れ、魯粛を重く用いるようになりました。

周瑜に直属する四千の兵と、所領の四県は、すべて魯粛に継承されています。

こうして周瑜は自分の死後のことにも、十分に配慮をしてから亡くなったのでした。

孫権は嘆き悲しむ

孫権は兄と同然に思っていた周瑜の死を大変に悲しみ、その様子は側に仕える者たちの心を打ちました。

周瑜の棺が龐統ほうとうによって呉に運ばれると、孫権はそれを出迎え、葬儀にかかる費用をすべて給付しています。

孫権は「公瑾どのは王を補佐する資質を持っていたが、思いがけなく短命に終わられた。私は何を頼りにすればいいのだろう」と言って嘆きました。

そして周瑜の死から19年後、呉の皇帝になった際には、「私は周公瑾がおらねば、帝位にはつけなかった」と述べ、改めて功績を称えています。

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