夏侯淵は曹操の挙兵に参加し、生涯に渡って仕えた重臣です。
騎兵の指揮を得意としており、食糧輸送や、各地の反乱討伐で活躍しました。
特に騎兵戦が多くなる涼州の討伐で真価を発揮し、馬超や韓遂を打ち破って平定に成功しています。
その後は漢中の守備につきましたが、劉備軍の黄忠に討たれて戦死しました。
この文章では、そんな夏侯淵の生涯を書いています。
沛国譙県に生まれる
夏侯淵は字を妙才といい、沛国譙県の出身です。
これは曹操と同じ出身地で、生年は不明となっています。
いとこに夏侯惇がおり、両者はそろって曹操の重臣になりました。
曹操の危機を救う
夏侯淵は曹操と若い頃から親しくしており、彼の危機を救ったことがありました。
これは曹氏と夏侯氏がともに前漢の功臣の家柄で、何代にもわたって、姻戚関係があったためです。
曹操は官職を辞して故郷にいた時期に、県の役人が起こした事件に巻き込まれ、罪人にされそうになったことがありました。
(事件の詳細は伝わっていません)
この時に夏侯淵が曹操の身代わりとなり、重い罪を引き受けて投獄されます。
しかし、間もなく曹操が夏侯淵を救出したので、なんとか助かりました。
このようにして、曹操と夏侯淵は旗揚げの前から助け合う関係だったのでした。
献身的な性格
夏侯淵は献身的な性格だったようで、これ以外にも、住んでいる地域が大きな混乱に見舞われ、食糧もろくに得られないことがありました。
すると夏侯淵は幼い自分の子を捨て、死んだ弟の娘を救っています。
この場合、犠牲にしたのは自分の子でしたが、曹操の身代わりになったことといい、夏侯淵には自分を後に置き、他人を助けようとする傾向があったようです。
このことが、夏侯淵の最期に影響を与えています。
曹操に従って部隊長となる
やがて董卓が台頭し、戦乱の時代になると、曹操は189年に兵を募集して旗揚げします。
この時に夏侯淵は夏侯惇や曹洪とともに従い、別部司馬・騎都尉という、騎兵の指揮官に任命されています。
やがて曹操が兗州の刺史になると、陳留や頴川の太守(長官)にも任命され、地域を統治する仕事も担当しました。
このように、夏侯淵は曹操を初期から支える人材だったのでした。
食糧輸送や反乱討伐に活躍する
200年になって、曹操と袁紹が戦うようになると、督軍校尉(将軍の補佐役)の代行に任命され、食糧輸送を担当しました。
夏侯淵は兗州・豫州・徐州にまたがる広範な地域を駆け巡り、絶えず食糧を安定して供給し続けました。
この働きによって、食糧不足に陥っていた曹操軍は立ち直り、勢いを盛り返しています。
このように、夏侯淵は後方支援をすることもあったのですが、前線任務でも功績を立てています。
昌豨を討伐する
昌豨という男が徐州の東海郡で反乱を起こすと、討伐にあたった于禁は、なかなかこれを攻め下すことができませんでした。
このために夏侯淵は援軍として派遣されましたが、速攻をしかけ、瞬く間に昌豨の屯営を十も攻め落とします。
これによって追いつめられた昌豨は降伏し、反乱は短期間で鎮圧されました。
昌豨は曹操もなかなか攻めきれないほど優れた武将だったのですが、夏侯淵はそれを圧倒したのでした。
夏侯淵は武将としては急襲を得意とし、敵の不意をつく行動が多くなっています。
軍中では「夏侯淵は三日で五百里、六日で一千里」とうたわれていましたが、これはそれほどに精強な騎兵隊を、夏侯淵が率いていたことを表しています。
(五百里は200km、一千里は400kmです)
夏侯淵にはこのように、曹操軍の他の武将にはない、際だった個性がありました。
各地の反乱を鎮める
その後、夏侯淵は黄巾賊の残党である徐和を討伐して軍功を立て、行領軍(近衛兵の指揮官)に昇進します。
こうして軍功を重ねると、曹操は夏侯淵の立場を強め、他の武将たちを束ねさせるようになりました。
夏侯淵はまず、諸将を従えて廬江(南東部)で反乱を起こした雷緒を討伐します。
ついで徐晃を従え、太原(北方)の賊軍も討伐しました。
この時には二十の屯営を攻略し、賊の頭目だった商曜を斬り、根城を破壊して反乱を完全に鎮圧しています。
さらには涼州(西方)で反乱を起こした韓遂の討伐にも参加し、異民族である氐族の一部を平定しています。
このように、夏侯淵はまさに東奔西走し、曹操の覇業を支えたのでした。
長安に駐屯し、西方の抑えとなる
夏侯淵軍は素早い行軍が得意だったため、曹操から各地に派遣されていましたが、212年になると行護軍将軍に任命されて長安に駐屯し、朱霊らを指揮して戦うようになります。
これ以後は西方の抑えとして、馬超などの涼州勢力や、異民族と戦いました。
涼州は精強な騎兵の産地でしたので、曹操軍の中でも特に騎兵の指揮が得意な夏侯淵が、この方面を任されたのでしょう。
夏侯淵はすぐに賊の劉雄や梁興を討伐して功績を立て、博昌亭候に封じられています。
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