曹植 天賦の才能を持ち、魏に波乱を招いた貴公子

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側近が粛清され、さらに失望を買う

曹操はそれから、いつか変事が起こるかもしれないことをかんがみて、楊修には才能があり、かつて曹操と敵対した袁氏の甥であることから、罪を着せてこれを誅殺しました。

このため、曹植はますます落ち着かない心情を抱えるようになります。

それから建安二十四年(二一九)になると、荊州北部を守っていた曹仁が関羽に包囲されました。

すると曹操は、曹植を南中郎将と行征虜こうせいりょ将軍に任命し、曹仁を救援するために遣わそうとします。

そして呼び寄せ、直接訓戒をしようとしました。

しかし曹植は酔いつぶれていて命令を受けることができず、このために曹操は後悔しつつ、これを取りやめます。

この件については、曹丕が曹植に酒を飲ませ、泥酔させて命令を受けられないようにした、という話があります。

いずれにしても、曹植は自らの失態と曹丕の策によって、曹操の後継者になることはなかったのでした。

曹丕が皇帝になり、冷遇される

二二〇年に曹操が亡くなると、曹丕が魏王の地位を継承します。

そして後漢の献帝に禅譲を迫り、魏の皇帝に即位しました。

すると曹丕は曹植の側近である丁儀と丁廙を誅殺し、さらにその一族の男子をもみな処刑します。

丁儀は曹操から娘婿にと望まれたほど才能がありましたが、曹丕の妨害によってかなわなかった、といういきさつがありました。

このために、丁儀は曹丕を憎み、曹植の味方をするようになっています。

丁廙もまた才能のある人物で、曹操に曹植の資質を褒め称えて聞かせ、後継者にすえるようにと推薦したことがありました。

曹丕は彼らを処刑することで、曹植のまわりから有能な人材を除き、自分の地位をおびやかすことがないようにしたのでした。

しかし、一族の男子まで殺害する必要はないはずで、この措置から曹丕の冷酷さと、曹植に対する強い憎しみをうかがうことができます。

また、諸侯(曹丕の弟たち)は都から出され、それぞれの領国に向かうようにとも告げられました。

それから黄初こうしょ二年(二二一)になると、監国謁者かんこくえっしゃ(諸侯の監視役)の灌均かんきんが「曹植は酒に酔うと乱れて傲慢になり、使者を脅しつけました」と、曹丕の望みに応じて曹植を中傷します。

役人は罪を問うようにと求めましたが、曹丕は太后たいごう(母親)に配慮し、安郷候に格下げにする措置ですませました。

曹丕はこのときに

「曹植はちんと母を同じくする弟である。
朕は天下に受け入れないものはない。
ましてや植を受け入れないことがあろうか。
骨肉の親族は、これを誅さないものである。
このため、植を改封する」

と詔を出しています。

この年、曹植は鄄城けんじょう侯に改封され、翌年には鄄城王となり、領地は二千五百戸となりました。

かつてに比べ、四分の一にまで削られたのでした。

さらに国替えされ、上奏する

二二三年になると、曹植は雍丘ようきゅう王に国替えとなりました。

そしてその年に都に登り、上奏します。

曹丕に対し、自分の罪を詫び、その徳を褒め称えました。

また、宮殿に招かれたことに感謝の意を表明しました。

これに対し、曹丕はその言葉を褒め、思いやりのある詔をもって答え、曹植を励まします。

しかしこの対応は表面的なものでしかなく、曹丕は曹植に対する敵愾心を捨てられずにいました。

曹植が曹丕に謝罪する

都に上る以前、曹植は曹丕に謝罪しなければならないと考え、首を斬るための斧と台を背負い、裸足で宮廷の門のところに姿を現しました。

そして曹丕に面会しましたが、曹丕は厳しい顔つきをし、話もせず、冠や履物も身に着けさせませんでした。

曹植が地に伏して涙を流したので、居合わせた太后(曹丕と曹植の母)は不快な気分になります。

それからようやく曹丕は命令を出し、曹植に王服を身に着けさせました。

またこのころ、曹丕の弟たちは各地の王に任じられていましたが、厳しい法によってしめつけられていました。

ある時、曹植の兄である任城にんじょう王・曹彰が不意に亡くなり、諸王(弟)たちは心を痛めました。

このため、曹植と白馬王・曹ひょうの兄弟は国に戻る際に、一緒に帰路をたどって久しぶりに交際し、悲しみを分かち合いたいと考えましたが、このことすらも許されませんでした。

このために曹植は怒りにかられ、詩を作ってその思いを表しています。

このように、後継者を争った曹植だけでなく、曹丕は兄弟たち全員を冷遇していたのでした。

【次のページに続く▼】

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