鉄砲(火縄銃)の伝来と普及 種子島時尭の働きと年号などについて

スポンサーリンク

製造の苦労と犠牲

そして時尭は、さっそく鉄砲の国産化にも取り組みます。

国産化に成功すれば、大きな富と力を生む元種になる、と考えたのでしょう。

しかしながら、島内の鍛冶屋たちは、鉄砲の筒の底をふさぐ方法がわからず、なかなか製造に成功しません。

幸いにして、翌年もポルトガル人が再び種子島に来航したのですが、そこに鉄砲の製造技術を持つ者が乗り込んでいました。

このため、時尭は八板やいた金兵衛きんべえという鍛冶屋に、ポルトガル人について製造技術を習得するようにと命じます。

しかし価値のある技術だったので、無償では教えてくれませんでした。

金兵衛には17才の娘がおり、この娘をポルトガル人に与えることを条件として、製造の技術を学んでいます。

言うなれば、金兵衛の娘は人身御供になったのでした。

そうして金兵衛は筒の底をふさぐ技術を習得したのですが、それは大きなネジを用いてふたをする、という方法でした。

当時の日本にはまだネジの知識がなかったので、なかなか手段がわからなかったのです。

つまりは鉄砲の伝来に伴って、ネジもまた日本に伝わったことになります。

さて、技術習得の代償として差し出された娘ですが、いったんは海外に連れ出されたものの、翌年になるとポルトガル人とともに種子島に来島しました。

技術を学び終えた金兵衛は、娘を取り戻すために家に連れ帰り、「娘は大病にかかって死んだ」とポルトガル人に告げました。

それだけでなく、葬式まで行ってポルトガル人の目をごまかし、娘を家に連れ戻したのですが、鉄砲の伝来においては、このような犠牲も存在したのでした。

鉄砲の普及

この新兵器の噂はただちに広まったようで、堺の橘屋又三郎という者が種子島に一年ほど滞在し、鉄砲の操作と製造技術を学びました。

そして習得した技術を堺に持ち帰ると、それは短期間で近畿、東海、そして関東地方にも広まっていきました。

また、時堯は購入した二丁のうちの一丁を、紀州・根来ねごろ寺の杉坊すぎのぼうという僧にゆずっており、これが紀州に強力な鉄砲傭兵集団が誕生するきっかけとなりました。

堺や紀州は戦国時代において、海路を通じた商業活動を盛んに行っていましたが、それゆえに広く情報網も備えており、鉄砲の伝来に敏感に反応できたようです。

鉄砲の伝来からわずか5年後の1548年には、当時の将軍・足利義晴が京都に城を築くにあたり、鉄砲の攻撃に備えるため、城壁を二重に構え、その間に石を入れて防御力を高めた、という記録があります。

このことから、短期間で鉄砲が急速に普及し、攻城戦に用いられるようになっていたことがわかります。

それ以外には、1550年代に、武田信玄が上杉謙信と戦った「川中島の戦い」の際に、信玄が300丁の鉄砲を備えていた、という話があります。

また、同じく1550年代に、家督を継いだばかりの織田信長は、500丁の鉄砲を備えていた、という話もあります。

これらの話から、伝来からおおよそ10年程度の間に、目端が利き、財力のある武将たちは、数百丁単位で鉄砲を備えていたことがわかります。

鉄砲はもはや、戦争には欠かせぬ兵器として日本に定着し始めたのでした。

伝来の異説

と、このようにして、種子島に鉄砲が伝わってから、急激に普及もまた始まったことがわかりますが、実は鉄砲は、もっと以前から日本に存在していた、という説があります。

1510年に、海外から堺に鉄砲を持ち込んだ者がおり、これを山伏が買い取って相模さがみ(神奈川県)の領主・北条氏綱うじつなに献上した、という話が「北条五代記」に残されています。

氏綱は鉄砲の価値をすぐに認めましたが、この時はまだ製造できる人間がいなかったため、しばらくは秘匿しておくことにしたようです。

また、1526年には甲斐かい(山梨県)の領主・武田信虎のぶとらの元にも鉄砲が持ち込まれた、という話もあり、東国においても、早くから鉄砲の存在は認識されていました。

しかしながら、この時期にはまだ普及には至りませんでした。

これはポルトガル人から直接、製造の技術を習得する機会がなかったから、というのが原因でしょう。

安定した供給体制が確立されないうちは、その兵器を戦力として用いるのは難しいからです。

この段階では、鉄砲はまだ個人輸入されたに過ぎなかったのだと言えます。

ゆえに、初の伝来が種子島でなかったとしても、種子島にはポルトガル人から直接その操作や製造方法を学べる環境があり、国産化に成功したことが、歴史的に大きな意味を持っているのだと思われます。

時尭が多額の予算を投じ、組織的に導入に取り組んだことが、普及の促進につながったわけで、鉄砲の伝来について、時尭の果たした役割は非常に大きかったのだと言えるでしょう。

【次のページに続く▼】