楊儀 諸葛亮の側近となるも、魏延と争い、舌禍によって身を滅ぼした文官

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諸葛亮が亡くなり、楊儀は撤退を指揮する

楊儀と魏延が同席して意見を戦わせると、互いに譲らず、怒った魏延が刃をふりかざして楊儀に突きつけ、楊儀は頬に涙を流すというありさまでした。

このために費禕が二人の間に入り、諭し、いさめて別れさせるといったことが、しばしば行われています。

そんな状況が続く中、諸葛亮は234年に出陣した際に、陣中で没してしまいました。

諸葛亮は亡くなる前に、楊儀と費禕と姜維きょういを呼び、自分が亡くなったら、軍を撤退させるようにと命じます。

そして、魏延には敵を防いで退路を確保する役割を与えるように告げますが、もしも命令をきかない場合には、置き去りにして撤退を決行するようにとも命じました。

立場上、副官の楊儀が中心となって撤退を行うことになりますが、仲が悪い魏延はその命令を聞かず、前線にとどまろうとするのではないかと、諸葛亮は見抜いていたのです。

魏延との争いが起きる

諸葛亮が見越した通り、魏延は楊儀からの命令を聞かず、諸葛亮の後継者になろうと考え、勝手に諸将に命令書を送り、蜀軍を統率しようとしました。

費禕は楊儀に命じられ、魏延の様子をうかがいに行きましたが、この横暴なふるまいに巻き込まれそうになったため、表面的には協力するふりをして、楊儀のもとに帰還し、状況を報告します。

これを受け、楊儀たちは諸葛亮の命令通り、魏延を置き去りにして全軍の撤退を開始しました。

するとそれを知った魏延は怒り、急いで軍を出発させて楊儀たちを追い抜きます。

そして橋を落として行軍を妨害し、先回りして蜀の都である成都へと向かいました。

こうした状況になったため、楊儀と魏延はそれぞれに上表し、劉禅に対し、自分こそが正しいのだと主張しました。

劉禅は判断に迷いますが、側近の董允とういん蒋琬しょうえんが、楊儀の方が正しいだろうと判定をしたので、魏延は孤立します。

魏延を討ち取り、頭を踏みつける

やがて魏延は軍を動かし、攻めかかってきたので、楊儀は将軍の何平かへいに命じ、これを迎え討たせました。

この時に何平が、魏延配下の将兵たちに向かい「丞相(諸葛亮)が亡くなられて間もないというのに、お前たちはいった何をしているのだ!」と叱りつけました。

すると魏延の将兵たちは、魏延に非があることはわかっていましたので、みな戦いを放棄して逃げ出します。

この結果、戦力を失った魏延は、息子たちとともに漢中にまで逃亡しました。

楊儀は将軍の馬岱ばたいに命じてこれを追撃させ、魏延を討ち取らせます。

魏延の首が届くと、楊儀はそれを踏みつけ、「ばかものめ、もう一度悪事を働けるものなら、やってみせてみろ!」と罵りました。

憎しみが余っての行動だったのでしょうが、死者への礼を欠いており、楊儀の人格に問題があったことをうかがわせます。

閑職に置かれる

楊儀は魏延を討ち取った功績が大きいものだと思い込み、諸葛亮にかわって蜀の国政を担当するのが、当然のことだと考えていました。

このため都尉の趙正ちょうせいを呼び寄せ、『周易しゅうえき』という占術によって吉凶を占わせます。

すると「家人」というが出たため、楊儀は黙りこくり、不機嫌な様子を見せました。

家人は家庭内の役割を示しており、国家の要人になれるような卦ではなかったのです。

実際のところ、諸葛亮は普段からひそかに、「楊儀は狷介けんかいで偏狭な性格だから、蜀の指導者にはふさわしくなく、後継者には蒋琬を考えている」と語っていました。

そして劉禅に対して内密に、「自分にもしものことがあったら、後のことは蒋琬に任せてください」と伝えていました。

それを知らない楊儀が成都に帰還すると、中軍師に任命されましたが、担当する職務はなく、閑職にすえられます。

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