范先と衞固を懐柔する
范先は杜畿を殺害して人々を威圧してやろうかと考えましたが、ひとまずは杜畿のふるまいを観察することにします。
やがて主簿(太守の側近)ら三十人が殺害されましたが、杜畿は落ち着いた様子で、慌てるそぶりを見せることはありませんでした。
このため、衞固は「杜畿を殺害しても損害を与えることはできず、いたずらに悪名を得るばかりとなるだろう。それに彼は、すでに我らの制御下にある」と述べ、杜畿を奉じることにします。
すると杜畿は衞固と范先に「君たちは河東で期待を集める存在だ。わしは君たちが成したことを仰ぎ見ているだけだ。君臣には定められた決まりがあり、成功も失敗もともにすることになっている。だから大事なことは、一緒に公平に協議して決めていこう」と言いました。
そして衞固を都督に任命し、丞(副官)の仕事と、功曹をも兼ねさせます。
また、范先には三千の将兵を指揮させました。
こうして杜畿は反乱の地に単身で入り込み、首謀者たちを懐柔したのでした。
大変に肝のすわったふるまいだったと言えます。
策を用いて衞固たちの力を削ぐ
衞固たちはこの措置に喜び、表面的には杜畿に仕えるふりをしますが、内心では軽んじていました。
やがて衞固はたくさんの兵を集めようとしますが、杜畿はこのことを気にして衞固に言います。
「常ならぬことを実施しようとする時には、人々の心を動揺させてはいけない。急にたくさんの兵を集めると、人々はこれを憂うだろう。ゆっくりと時間をかけ、費用を投じて兵を集めるといい」
衞固はこれをもっともだと思い、言われた通りにしました。
そして費用をかけ、数十日の時間をかけて募兵しましたが、諸将は貪欲で、応募者が多かったように見せかけてたくさんの費用を請求しましたが、実際に集まった兵は少数となります。
また、杜畿は次のように衞固に言いました。
「家のことが気にかかるのが人情というものだ。だから諸将や属官、役人たちに交互に休息を取らせるといい。彼らを状況に応じて召し寄せるのは、難しくないのだから」
衞固らは人々の望みに逆らい、悪く思われることを避けようとして、これにも従いました。
この結果、外にある善人たちは密かに杜畿を支援するようになり、反乱者たちはそれぞれが別れて家に帰ったので、その勢力が弱まっていきます。
このように、杜畿は言葉巧みに策を用いて、衞固らが大軍を集めるのを妨害し、結束して力が高まることを防いだのでした。
河東の反乱が鎮圧される
やがて張白騎に東垣が攻撃され、高幹に濩澤に侵入され、上党の諸県で高官たちが殺害され、弘農で郡太守が捕縛されるといった事態が発生し、不穏な情勢となります。
この動きに呼応するため、衞固らはひそかに兵を集めようとしましたが、まだ実現していませんでした。
杜畿は諸県に自分に味方する者がいると知っていたので、数十騎のみを引き連れて出発し、張辟におもむいて守備につきました。
すると官吏や民が城をあげて杜畿を助け、数十日で四千以上の兵力を得ます。
衞固らは高幹や張晟らとともに杜畿を攻撃しましたが、攻め下すことはできませんでした。
このため、諸県を略奪してまわろうとしましたが、得るところはありませんでした。
やがて大軍が到着し、高幹と張晟は敗北し、衞固らは誅伐されます。
杜畿は反乱に加わっていた者たちをみな赦免し、元の仕事をさせるように措置を取りました。
こうして河東の反乱は終結し、治安が回復します。
河東の情勢を安定させる
このころ、天下の郡県はみな破壊されていましたが、河東は最も早く安定を取り戻したので、損害が少なくてすみました。
杜畿はこの土地を治め、寛大に恵みをもたらすことを重視し、民に過剰に干渉することはありませんでした。
民の中に、互いに訴訟を起こして争う者たちがいると、杜畿は自ら会って大義を説き聞かせ、いったん帰ってよく考えてみるようにと伝えます。
そしてもしもまだ納得できないのであれば、また役所にやって来るがよい、とも述べました。
彼らが郷里に戻ると、土地の父老たちが起こって責め立てます。
「このような君主がおられるのに、どうしてその教えに従わないのだ」
こうした事態があったので、訴訟が少なくなっていきます。
杜畿は統治下の諸県に、親孝行な子供や、貞節な婦人、祖父母を大事にする孫などを推挙するようにと伝えます。
そしてその労役を免じ、たびたびいたわり、励ましました。
それから牛や馬を少しずつ民に割り当てて世話をさせ、鶏や豚、犬にいたるまで、みな規則をもって育てさせます。
このため、民は農耕に励むようになり、各家庭はみな豊かになっていきました。
すると杜畿は「民が富んだならば、次は教育をしなくてはならない」と述べ、冬の間に戦い方を教え、また学校を開き、自ら経典を手にとって教授しました。
このような杜畿の活動によって、郡は教化されていきます。
この結果、河東はとりわけ儒者が多い地域になりました。
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