郭嘉 神のごとき智謀を備え、曹操の理解者だった軍師の生涯

曹操と郭嘉の話

曹操は郭嘉の話は、次のようなものでした。

曹操は「袁紹は州の軍勢を要し、青州や并州を従属させている。

領地が広く兵は強大で、たびたび天子(皇帝)に対し不遜な行いをしている。

だからわしはやつを討伐したいと思っているが、なかなか力では勝てそうにない。どうすれば良いと思うか」と尋ねました。

郭嘉はこのように答えました。

「劉邦と項羽の力が同等でなかったことは、公がよくご存知の通りです。

劉邦は項羽よりも、知力において勝っておりました。

このために項羽は強大でありながらも、結局は敗れ去り、滅亡しています。

私が考えますに、袁紹には十の敗北の要因があり、公(曹操)には十の勝利の要因があります。

袁紹は兵力が強大であるとはいえ、策を考案する能力が欠けています。

袁紹は面倒な礼儀や作法などを好んでおりますが、公は自然の姿に任せておられます。

これは道において優れた面であり、公が優位となる第一点です。

袁紹は天子に歯向かう行動を取っていますが、公は天子を奉じて天下を従えておられます。

これは正義において優れた面であり、第二点です。

後漢の末期は綱紀が乱れたことによって、失政に陥りました。

袁紹は後漢と同じような、しまりのない政治を行い、それによってしまりのなさを救おうとしていますので、うまくいくことはないでしょう。

一方で公は厳しさを持ってしまりのなさをただしており、そのために上下ともに掟をわきまえています。

これは政治において優れた面であり、第三点です。

袁紹は外向きには寛大でも、内心では猜疑さいぎ心が強く、人を用いようとしても、その者を心から信用することができません。

信頼しているのは親戚や子弟など、身内ばかりです。

公は外に対しては簡略にふるまい、心の働きが明晰です。

そして人を用いる場合に疑いを持たれず、優れた才能を持っているかどうかで判断し、親類と他人のわけへだてをなされません。

これは度量において優れた面であり、第四点となります。

公は方策が見つかればすぐに実行に移し、変化への対応力が優れており、行き詰まることがありません。

これは策謀において優れた面であり、第五点となります。

袁紹は何代にも渡って積み重ねられた名門の基盤を元にして、高尚な議論を行い、謙虚な態度をとることで評判を得ました。

このため、外見を飾ることを好む者たちは、数多く袁紹に身を寄せています。

一方で、公は真心をもって人を待遇し、正義を貫いておられます。

表面を飾る事をなさらず、慎ましさをもって人を従えており、功績のある者には惜しむことなく恩賞を与えています。

このため、誠実で将来を見通す見識を備えた者たちは、みな公のお役に立ちたいと希望しています。

これは徳において優れた面であり、第六点となります。

袁紹は他人が飢えていたり、凍えていたりするのを見ると、哀れみの気持ちを顔に表しますが、目に触れないことには考えが及びません。

これはいわゆる、婦人の仁であるに過ぎません。

一方で、公は目の前の小さな出来事については、時にはないがしろにされることもありますが、大きなことになると、四海(国中)の人々と接し、恩徳を施され、人々の期待以上にふるまわれます。

目にふれないことに対しても周到に考えを巡らされ、処置を行わないということはありません。

これは仁において優れた面であり、第七点です。

袁紹の元では臣下たちが権力を争い、讒言ざんげんをするために、陣営が混乱しています。

公は道義を持って臣下たちを統御され、讒言が浸透することはありません。

これは聡明さにおいて優れた面であり、第八点です。

袁紹は物事の善し悪しの判断を、はっきりと下すことができません。

公は物事の良い点を認めた場合、礼を持ってそれを推し進め、良くないと判断した場合には、法をもってそれをただされます。

これは文において優れた面で、第九点です。

袁紹は、虚勢をはることが多いのですが、軍事の要点を理解していません。

公の用兵は神のごときもので、味方の将兵はそれを頼みとし、敵はそれを恐れています。

これは武において優れた面であり、第十点です」

これを聞くと、曹操は笑いながら言いました。

「君の言葉にこたえられるほどの徳を、私は備えているだろうか」

郭嘉はこう続けました。

「袁紹は今、北方の公孫瓚こうそんさんを攻撃しています。

その隙を利用し、徐州に向かって呂布を捕らえるのがよろしいでしょう。

呂布を放置し、やがて余裕ができた袁紹が呂布に援助するようになれば、大きな害をもたらすことになります」

曹操は「その通りだ」と述べ、さっそく呂布を征伐することにしました。

【次のページに続く▼】

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