荀彧 曹操の元で王佐の才を発揮するも、自害に追い込まれた悲運の宰相について

董卓の滅亡を予測する

荀彧はもとより王佐の才の持ち主だと言われていましたが、曹操の元でそれをいかんなく発揮していきます。

荀彧が特に優れていたのは、戦略の見通しを立てることでした。

曹操は暴虐をほしいままにする董卓に対し、どう対処すべきかと荀彧に問うたことがありました。

この時に荀彧は、「董卓は何もせずとも自滅するでしょう」と予測し、その通りに董卓は配下の呂布と仲違いをし、やがて殺害されて自滅しました。

曹操に足元を固めることを説く

また、曹操が敵対する徐州の陶謙が病死したことを知り、徐州への侵攻を計画したことがありました。

しかしこの時はまだ兗州(えんしゅう)に流れてきた呂布と争っている時期であり、足元が固まっていなかったので、荀彧は反対します。

「高祖や光武帝(後漢の皇帝)が天下を治めることができたのは、根拠地の支配を固め、兵員や兵糧を確保したからです。まずは兗州の統治を安定させ、兵糧をたくわえて呂布に勝利を収め、それから他の土地に向かうべきです」と説きました。

曹操は荀彧の助言に従い、兵糧を十分に集積してから呂布と戦ってこれを討ち破り、兗州の統一に成功しています。

曹操は前線での指揮能力は優れていたものの、全体の戦略を考えるのはさほど得意ではなく、この点を荀彧が見事に補っていたことになります。

献帝を迎え、その側近となる

196年になると、董卓に擁立された献帝が、長安を脱出して洛陽に帰還していました。

董卓の死後は李傕などの武将たちが実権を握ったのですが、彼らは内輪もめに終始しており、とても朝廷を保っていくほどの手腕はなく、このために逃げ出して来ていたのです。

この時に荀彧は献帝を迎え入れて擁立するべきだと主張し、曹操はこれを受け入れました。

そして曹操の本拠である許昌に献帝を迎え、新たな都にしています。

この功績によって曹操は大将軍に、荀彧は侍中・尚書令という地位についています。

侍中は皇帝に側仕えする役職で、尚書令は皇帝の秘書官であり、朝廷の一切を取り仕切る権限を持っていました。

つまり荀彧は皇帝の側近として、朝廷を主導する立場に立ったことになります。

漢の復興を志す荀彧にとっては、この上なく適した人事であったと言えるでしょう。

荀彧の助言によって献帝を得たことで、曹操の陣営は漢王朝を背景とする正当性を確保したことになり、これによって政治的に他の勢力よりも有利な立場を得ることができました。

人材を推挙して曹操陣営を充実させる

荀彧は当人が優れた能力を持っているだけでなく、多彩な人材とのつながりも持っていました。

そして人々の才能を的確に見抜いて曹操に推薦しています。

例えば曹操に「君に代わって策を立てられるものはいるか?」とたずねられた時、甥の荀攸と、同郷の鍾繇(しょうよう)を推薦しました。

荀攸は曹操陣営でも一、二を争うほどの優れた軍師として活躍し、鍾繇は涼州の抑えや法の整備などの事業で目立った功績を立てています。

また、策謀に長けた人材として戯志才(ぎしさい)と郭嘉を推薦し、彼らはいずれも戦場で優れた策を立て、敵を撃ち破るのに貢献しました。

その他にも、陳羣(ちんぐん)や司馬懿、華歆、王朗といった人材を推薦し、曹操の家臣団の充実を図っています。

もしも荀彧がいなければ、曹操陣営が優れた人材を多く抱え、他勢力よりも優位な地位を得ることはなかったかもしれません。

荀彧が推薦した人物はいずれも後に大臣や将軍といった地位にまで昇進しており、人の能力を見抜く目が、抜群に優れていたことが証明されています。

後漢の末期には優れた人材がそれにふさわしい地位が得られないことが大きな弊害になり、衰退を招く原因になっていたのですが、荀彧はその点を解消したことにもなります。

【次のページに続く▼】

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