姜維 諸葛亮に見いだされて魏と戦うも、蜀の滅亡を招いた大将軍

費禕に許可されず

この計画を実行するため、姜維が大軍を動かそうと望むたびに、費禕はいつも制約を加え、一万程度の兵を指揮させるだけでした。

費禕は姜維に対し、次のように述べています。

「われらは丞相(諸葛亮)にはるかに及ばない。

その丞相でさえ、中原の地を平定することはできなかった。

だから我らにはなおのこと、できるはずがない。

まずは国家を保ち、民を治め、社稷しゃしょく(国の系譜)を守るべきなのだ。

功業をたてようとするのは、それだけの能力がある者の出現を待たなければならない。

僥倖ぎょうこうを望み、一度の戦いで勝敗を決しようとしてはならない。

もしもうまくいかなかった時に、後悔をしても遅いのだ」

費禕は自分にも姜維にも、諸葛亮を超える能力はないのだから、魏を打倒するのは不可能だと見切っていたのでした。

なので、諸葛亮を超えるほどの能力を持った者が現れるまで、蜀を保っていくのがよいと考えていました。

結果からすると、この見立ては正しかったのですが、姜維は「自分にはできる」と考えており、これが蜀を疲弊させることにつながっていきます。

費禕が亡くなり、大軍を率いるようになる

こうして費禕は姜維の動きを抑えていたのですが、253年になると、魏の刺客の手にかかって暗殺されてしまいます。

するとその夏、権限が増した姜維は数万の大軍を率い、石営から董亭とうていを経て、南安を包囲しました。

かねてよりの、涼州を奪取する計画を実行に移したのでした。

すると魏の刺史・陳泰ちんたいが包囲を解こうとして出陣してきます。

姜維は南安を攻め落とせぬまま、食糧が尽きて撤退しました。

この頃から、姜維が主導する軍事活動が盛んになっていきます。

魏軍に勝利する

翌254年になると、姜維は督中外軍事(地方の統治権と軍事権を備えた位)の官位を加えられます。

そして隴西に再び出陣すると、狄道てきどうを守っていた李簡が城をあげて降伏しました。

さらに進撃して襄武じょうぶを包囲し、魏の将・徐質じょしつと戦って勝利し、その首を取ります。

こうして姜維は魏軍に勝利を収めると、多数の兵を降伏させました。

そして河関かかん・狄道・臨桃りんとうの三県の住民を蜀に移住させ、帰還します。

張翼に批判される

こうして姜維は2年続けて数万の大軍を動かしたのですが、これによって蜀の物資や財力が、大きく消耗します。

このため、征西大将軍の張翼ちょうよくは「国家は小さく、民の労苦は大きくなっています」と述べ、「みだりに軍を動かすべきではありません」と主張しました。

しかし姜維はこれを聞き入れず、次の年にも多くの軍勢を動かします。

大勝利を収める

255年には、車騎将軍・夏侯霸らとともに狄道に出て、桃水の西で魏の雍州刺史・王経おうけいに大勝します。
(夏侯霸は魏の将軍でしたが、この頃には姜維と同じように蜀に降伏していました)

王経の軍勢を数万人も討ち取ると、王経は撤退して狄道城に立て籠もりました。

姜維はこれを追撃して包囲しましたが、魏の征西将軍・陳泰が包囲を解くために進軍をしてきたので、姜維は攻めきれずに退却しています。

こうして姜維は城を奪うことには失敗しましたが、その軍事能力を魏に見せつけたのでした。

この時が、姜維の最盛期だったと言えます。

段谷で大敗する

256年になると、姜維は遠征先で大将軍に任命され、名実ともに蜀軍を主導する立場を得ます。

しかしずっと前線にとどまっていたために、諸葛亮や蒋琬、費禕ら蜀の代々の宰相と比べると、内政に関する権限が乏しくなっており、蜀全体を掌握するほどの実力は持っていませんでした。

姜維は兵馬を整えると、鎮西大将軍の胡済こせいとしめしあわせ、上邽じょうけいで落ち合うことにします。

ですが胡済は約束を守らず、やってきませんでした。

この結果、姜維は段谷だんこくで魏の将軍・鄧艾とうがいに打ち破られ、軍兵が逃げ惑う状態となり、多数の戦死者を出してしまいます。

魏の側の記録では、「討ち取った者と生け捕りにした者は万単位になった」「数十の将の首を取り、数千の兵の首を得た」とされており、完敗でした。

胡済がどうして約束を破ったのかは不明ですが、姜維は蜀軍を充分に掌握できていなかったのかもしれません。

蜀軍に参加していた者たちは、この損害に非常に怒り、隴より西の地では、騒乱が起きて情勢が不安定になりました。

このため、姜維は過ちを認めて謝罪し、自ら官位を下げて欲しいと願い出ます。

こうして姜維は後将軍・行大将軍事(大将軍代行)に降格となりました。

姜維地図2

【次のページに続く▼】

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