張良 王佐の才をふるい、劉邦を皇帝にした名軍師の生涯について

伝説の意味

この「黄石公」の逸話は、日本の能楽にも取り入れられている有名な話です。

実際にこのような老人が存在したのかは不明ですが、張良は潜伏していた時代に、軍師としての優れた能力を養っていったのは確かなようです。

この話の要点は、相手の意図が不明なうちから身を低くし、謙虚に構えてこそ、自分が今持っていない知識や考え方、情報を身につけることができるという、学びの原則を教えているのだと思われます。

この時代に張良は多くの書物から学び、始皇帝個人を暗殺するためではなく、秦という国そのものを滅ぼすにはどうすればいいのかという、戦略を思考する力を身につけていきました。

項伯と知り合い、義の盟約を結ぶ

張良は下邳の滞在時に、項伯という人物と知り合いました。

彼は他の土地で人を殺して逃げてきていたのですが、張良はこれを匿って助けています。

項伯はこの張良の行いに深く感謝し、義の盟約を結びました。

義というのはこの時代に新しく生まれた概念で、個人と個人の相互扶助的な、強い結びつきのことを指しています。

それは時に主従や親子といった縦の関係よりも優先されることがあるほどに、強固な絆として機能しました。

秦の統一事業によって、大陸には国を失って彷徨する人間が増え、このために個人同士の結びつきが重視される風潮が生まれたのでしょう。

項伯は項羽の叔父であり、このため、張良が項伯と義の盟約を結んだことが、後に張良と劉邦の運命に大きな影響を及ぼすことになります。

陳勝・呉公の乱

紀元前210年、始皇帝は病のために死去し、これをきっかけとして秦の支配体制が揺らぎ始めます。

秦は大陸の統一に成功したものの、その支配は苛烈であり、厳しい法で人々を縛ったために各地で不満が高まっていました。

こうした状況下で、人足を秦の都・咸陽(かんよう)まで連れて行く仕事を課せられていた、陳勝と呉公という男たちがいました。

しかし途中で水害によって道が水没し、予定の期限にはたどりつけない状況になります。

秦の法律では、人足が期限内に到着できない場合には死罪になるため、陳勝と呉公はそのくらいならばいっそ反乱を起こしてやろうと考え、その場にいた900人の人足とともに旗揚げをしました。

するとその勢力は、たちまちのうちに数万の大軍に膨れ上がり、各地で秦への反乱が相次ぐ状況になります。

これは陳勝や呉公が優れていたというより、秦の統治への不満が高まりきったところに、彼らが反抗へのきっかけをつくったことで、特別なことをせずとも、すぐに賛同者が増えていった、ということのようです。

秦の打倒を目指す張良もまた、この波に乗って立ち上がりました。

劉邦と出会う

張良は兵を集めようとしますが、わずかに100人程度の部隊しか編成できませんでした。

張良は優れた頭脳を持っていましたが、自ら大軍を集め、その頭領になるには向いていない人物だったようです。

このため、兵を集めるのが得意な将に策を授けようと思い、反乱軍の指揮者たちの元を訪れます。

しかし、どの将も助言に耳を貸さず、このために張良は自分を認めてくれる相手を求め、各地を転々とすることになります。

そして楚の王族であった景句という将の元を訪ねようとする途中で、沛で挙兵した劉邦の軍勢と遭遇しました。

これが運命の出会いとなり、その後の大陸の動向が大きく変わることになります。

張良は劉邦へ面会を申し入れると、すぐに会うことができました。

実際に話をしてみると、劉邦は他の将たちと違い、張良の話に素直に耳を傾けてくれます。

そして張良は劉邦から「よければ我が軍に留まり、作戦を授けてくださらぬか」とまで言われます。

劉邦は言葉だけでなく、戦いの際には常に張良が提案した策を用いて戦果を上げ、張良を感激させました。

張良はこの時、「沛公(劉邦のこと)は天下の英傑だ」とまで言って賞賛しています。

それまで会った将たちに相手にしてもらえていなかったので、自分の才を認め、策を用いてくれる劉邦の存在は、輝いて見えたことでしょう。

【次のページに続く▼】

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