張良 王佐の才をふるい、劉邦を皇帝にした名軍師の生涯について

始末をつけて無事に戻る

やがて樊噲もまた機を見て席を立ち、劉邦と合流して自軍の陣地へと撤収しました。

項羽はやがて劉邦の不在に気がつきましたが、その時にはすでに遠くまで逃げた後でした。

張良は、劉邦は酒に酔ってしまったため、失礼がないように帰ってしまいました、と言い繕い、項羽に謝罪します。

そして用意してきた豪華な贈り物を項羽に献上して喜ばせると、自身も席を辞して劉邦の元に戻っています。

宴席の後

豪華な贈り物を受け取ったことで、項羽は機嫌よく宴席を去りましたが、劉邦を殺害する好機を逃した范増は、激怒していました。

そして張良が持ってきた贈り物を剣で打ち砕き、「あんな小僧(項羽のこと)とでは、とても天下を謀ることはできぬ」と言って嘆きます。

范増はため息をつき、「いずれ天下は劉邦のものとなり、我々は捕虜になるだろう」と予言しました。

こうして劉邦は、張良の知略と樊噲の勇気によって、最強の武将である項羽に殺害されかかる、という重大な危機を乗り越えることができました。

劉邦の別れに際し、桟道を焼くことを勧める

項羽は劉邦を屈服させて咸陽に入ると、皇帝の子嬰を処刑し、財宝を奪った上で火を放って宮殿を焼き払い、秦の民から強い反感を買うことになりました。

一方で、張良の忠告に従って略奪を働かなかった劉邦の評判は、項羽との比較によって向上しています。

項羽は根拠地の彭城を首都に定め、秦の討伐に功績のあった諸侯を各地の王に任命しました。

項羽に次ぐ功績を立てた劉邦は、漢と巴蜀という辺境の地の王に任じられました。

このために、以後の劉邦は漢王と呼ばれるようになります。

(これが漢民族の語源にもなっています。)

これは劉邦とその臣下たちの実力を警戒した、范増による措置だと思われます。

張良は韓の王に任じられた成の補佐のため、劉邦と別れることになります。

この時に張良は、劉邦に蜀につながる桟道を、渡りきったら燃やしてしまうように、と助言しました。

巴蜀は山に囲まれた峻厳な土地で、桟道は巴蜀と他の地域をつなぐ道のことです。

これを焼き払うことで、劉邦は他の土地に進出する気持ちを持っていないと示し、項羽陣営の警戒を解くようにと勧めたのです。

特に范増は、劉邦が項羽の地位を奪いかねない存在であるとして、何らかの理由をつけて討伐を実行する可能性がありました。

張良の助言は、桟道を焼くことで簡単に攻め込めないようにし、同時に項羽と范増の警戒心を和らげる策でした。

劉邦は張良の言葉を受け入れ、巴蜀に到着すると桟道を焼かせています。

韓王が殺害される

韓王の成は、劉邦に協力した過去があったことから項羽に警戒されており、彭城に軟禁された状態が続いていました。

このため、張良は「漢王(劉邦)は桟道を焼いており、逆らう意志は持っていません。それよりも、斉で反乱を起こしている田栄に対処すべきではないでしょうか」という内容の書簡を項羽に送りました。

項羽はそれはもっともだと考え、ひとまず劉邦のことは放置して、斉の田栄の討伐に向かいます。

しかし韓王を彭城から出すことは許可せず、最終的にはこれを処刑してしまいました。

韓王が生きていれば、いずれは再び劉邦に協力し、仇を成すであろうと見なした范増が主導し、再び韓を滅ぼしてしまったのです。

これはいかにも乱暴な措置であり、范増は結局のところ、項羽と似たもの同士だったのでしょう。

主君を殺害されてしまった張良は彭城を脱出し、抜け道を通って巴蜀にいる劉邦の元にたどり着きました。

こうした動きにより、秦にかわって項羽が建国した西楚が、張良にとっての新たな仇になりました。

【次のページに続く▼】

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