呂布奉先 飛将と呼ばれ、丁原や董卓を裏切った最強武将の生涯

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袁術と戦う

こうして呂布は袁術と敵対し、曹操と和睦する道を選択します。

すると呂布に婚姻を破棄され、使者を処刑されてしまった袁術は激怒します。

そして韓暹かんせん楊奉ようほうといった勢力と同盟を結び、連携して呂布への攻撃を開始しました。

呂布は情勢が不利になると、陳珪を呼んで、「おまえの策にのったら、袁術の攻撃を受けることになったぞ。どう対処すればいい?」とたずねました。

陳珪は「韓暹・楊奉と袁術の連携は即席のものでしかなく、切り崩すことが可能です。息子の陳登の見立てによれば、彼らは群れをなす鶏のようなもので、一つのとまり木にまとまることはありえず、分裂させることができる、とのことです」

そして陳珪は呂布に、韓暹と楊奉に使者を送り、軍需物資を提供してこちらに寝返るように促すことを提案しました。

呂布がこれに従い、韓暹と楊奉に「ありったけの物資を提供する」と申し入れると、果たして彼らは袁術を裏切り、呂布に味方をすると約束します。

すると呂布は軍を率いて進撃し、袁術配下の将軍・張勲ちょうくんと対峙しました。

そして呂布が張勲の陣営の間近にまで迫ると、韓暹と楊奉は呂布に呼応し、張勲の軍勢に攻めかかりました。

味方と思っていた軍勢に、突如として戦場で裏切られたため、張勲の軍勢は大混乱に陥って敗北し、川に落ちて溺死した者の数は、数え切れないほどになります。

この勝利に乗じて、呂布は袁術の本拠である寿春じゅしゅん付近まで軍を進め、そのあたりで略奪をしました。

この時に呂布が袁術を挑発する手紙を送りつけたので、袁術は憤慨し、自ら五千の歩兵と騎兵を引きつれ、淮水わいすいのほとりにまでやってきます。

しかし既に呂布の騎兵は淮水の北に戻っており、袁術に対して、おおいに嘲笑を浴びせてから帰還しました。

呂布といい、韓暹や楊奉といい、徐州周辺の武将たちは裏切りを平然と行う者たちばかりとなっており、この地域はまことに混沌としていたのだと言えます。

【この頃の各地の勢力図 東部では呂布・曹操・劉備が争っていた】

曹操を裏切り、劉備を攻撃する

こうして袁術を弱体化させると、気が大きくなったのか、呂布は再び曹操と敵対するようになります。

198年に、呂布は曹操に通じた劉備に攻撃をしかけました。

曹操は腹心の夏候惇かこうとんを救援に向かわせますが、呂布の部将である高順こうじゅんに討ち破られています。

このため、劉備は曹操の元に逃亡し、小沛は呂布のものとなりました。

しかし、このわずかな利益を得たことによって、かえって呂布は、曹操に追いつめられることになります。

曹操に攻めこまれる

曹操は劉備と夏候惇の敗北を受け、自ら大軍を率いて呂布を討伐することにしました。

曹操はまずほう城を奪取すると、続いて呂布の本拠である下邳に押しよせます。

彭城が攻撃されている間、呂布の参謀である陳宮は、「敵は遠くからやってきましたので、疲労しています。ですから下邳より出撃し、こちらから攻撃をしかけるのが得策でしょう」と呂布に進言をしました。

しかし呂布はこれを受け入れず、「敵がやって来るのを待ってから撃退し、泗水しすいに追いつめて溺死させた方がよかろう」と答え、陳宮の策を用いませんでした。

呂布は先に袁術軍を淮水に沈めて大勝しましたので、それを再現しようと思ったのでしょう。

そして呂布は自分の考え通りに、曹操軍が泗水を渡ってから、騎兵を率いて迎撃に出ました。

しかしこの時にはすでに、曹操軍は行軍の疲労も取れていたようで、呂布はあえなく撃破されてしまいます。

陳宮は優れた策士でしたが、呂布がその意見を用いないことが多かったので、なかなかその実力を発揮できませんでした。

曹操への降伏を考える

呂布を破り、下邳の城下に到着した曹操は、自分に味方するのと、袁術に味方するのと、どちらが得かを説明する手紙を呂布に送ります。

それを読んだ呂布は、曹操に城を激しく攻撃されていることもあって、ついに降伏を考えるようになりました。

この時点において、呂布と曹操の対決は、実質的に、曹操の勝利に決したのだと言えるでしょう。

呂布は城門の上に出て、「曹操軍の将兵たちよ、そう苦しめないでくれたまえ。わしは殿との(曹操)の元に出頭するつもりなのだから」と呼びかけました。

しかし陳宮が「逆賊である曹操を『殿』と呼ぶなど、間違っています。いまやつに降伏するのは、石に向かって卵を投げつけるようなものですぞ。命をまっとうできるはずがありません」と言って、猛反対をします。

すると呂布は、曹操に降伏しても命が助からないかもしれないと気づき、降伏を取りやめました。

呂布の対応は、常に行き当たりばったりだったという意味では、一貫性がありました。

【次のページに続く▼】