劉邦はどうして項羽を討ち破り、漢の高祖になれたのか?

韓信が逃亡し、蕭何は大将軍に推薦する

こうして韓信は下級将校の地位を得たものの、これではとうてい自分の望みは叶えられそうにないと思い、劉邦軍からも脱走してしまいました。

蕭何はこれを聞いて直ちに韓信を追いかけ、劉邦に強く推薦することを約束し、もしも劉邦がこれを受け入れない場合には、自分も漢から抜ける、とまで言って、韓信を連れ戻しました。

一方で、劉邦は腹心の蕭何までもが逃げてしまったと誤解して動転しましたが、蕭何が戻ってくると、安心するとともに、逃げたことを責めます。

これに対し蕭何は、韓信を連れ戻すために漢を離れたのです、と説明しました。

そして、もしも劉邦が天下を望むのであれば、韓信を全軍を統括する大将軍の地位につけるべきだと、強く勧めます。

韓信はこれまでになんら軍事的な実績のない男でしたが、劉邦はこれを受け入れ、大将軍の地位を与えることを約束しました。

このあたり、韓信の才能を見抜いた蕭何も、その蕭何の推薦をあっさりと受け入れた劉邦も、並外れた人物であったと言えます。

蕭何は過去や経歴にとらわれずに人の才能を的確に見抜く目を持っており、劉邦はその蕭何を信頼するが故に、破格の抜擢を決断したのでしょう。

こうして劉邦は天下を制するために必要な人材を、またひとり手に入れたのでした。

韓信の指摘

大将軍になった韓信は、劉邦と項羽を比較し、どこに勝機があるのかを劉邦に説きます。

韓信は、「項羽は戦いに強いが、その性格には欠陥が多い」と指摘します。

項羽は「婦人の仁と匹夫ひっぷの勇」の持ち主に過ぎない、つまりは身近で親しい人にしか優しくできず、取るに足らない男が備える、小さな勇気しか持っていない、というのが韓信の見立てでした。

こうした性格の持ち主であることに加え、人に公平に接することができないので、項羽が与えた報奨に不満を持つ諸侯が多く、いずれは反乱が発生し、関中に侵攻する機会が訪れることになるでしょう、と述べました。

さらに、関中を与えられた章邯らは、20万の兵士の犠牲によってその地位を得たと住民に認識され、このために憎まれており、これとは逆に劉邦は略奪をしなかったことで人気を得ているので、関中を手に入れるのは容易です、と劉邦に情勢を説明しました。

この戦略論を聞いたことで、他の将軍たちは韓信が抜擢されたことを納得し、劉邦軍はまとまりを得ていきました。

項羽への反乱が発生する

韓信が指摘した通り、間もなく大陸の北東にあるせいの地で、項羽に対する反乱が発生しました。

斉では田栄という王族が秦との戦いで功績をあげたのですが、項羽は田栄がかつて叔父の項梁を見殺しにしたことを恨んでおり、このために秦の滅亡後に、田栄にはいかなる領地も与えませんでした。

このため、田栄は反乱を起こし、項羽が封じた王を殺害し、自らが斉王の地位につきました。

これを受け、項羽は斉へ出兵して楚から離れ、劉邦が軍勢を動かしやすい状況が作られていきます。

劉邦は韓信に命じ、関中への侵攻作戦を実行に移しました。

韓信が関中を攻め落とす

韓信は焼き払った蜀の桟道を再建すると見せかけ、別の道を通り、密かに関中に侵入します。

敵将の章邯は、桟道の再建にはかなりの時間がかかるため、そう簡単には攻め込んでこれないだろうと思い込み、油断をしていました。

韓信はそうして敵に隙を作り出した上で、劉邦を支持する秦の人々や密偵の手引きによって、章邯が支配する関所や城を次々と陥落させます。

これに慌てた章邯は、廃丘という城塞に籠城しますが、水攻めによって追い出され、さらに劉邦軍の追撃を受けて追い詰められ、自害しています。

韓信は続いて章邯の元部下で、関中を分割統治していた他の王たちも討ち破り、全土の制圧に成功しました。

こうして劉邦はごく短期間で、秦がかつて大陸を制する上で基板とした土地を手に入れ、諸侯たちの中でも最大の実力を得るに至っています。

また、韓信の実戦における作戦と指揮能力の高さも証明され、劉邦から大きな信任を得ることになりました。

【次のページに続く▼】

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