劉邦はどうして項羽を討ち破り、漢の高祖になれたのか?

樊噲が乱入し、劉邦は逃走する

張良はこのままでは劉邦の命が奪われるのは時間の問題だと判断し、宴席を抜け出し、外で待たされていた樊噲のところに赴きます。

そして樊噲に劉邦の危機を伝え、宴席に乱入して救うようにと促しました。

これを受けて樊噲はただちに警備の兵士を押しのけて宴席に突入し、「宴席のお流れを頂戴したく参りました!」と叫んで項羽をにらみつけます。

その剣幕に圧倒され、剣舞は中止となり、劉邦は危機を脱しました。

項羽は勇士を好む性格でしたので、樊噲の乱入をむしろ喜び、酒と肉を与えてもてなします。

すると樊噲は、それを平らげた後で、「沛公(劉邦)は咸陽を攻め落としたものの、財宝に手をつけず、項羽将軍の到着を待っていたのに、讒言を聞いて沛公を殺そうとするのは道に外れた行いです。秦が働いていた暴虐と、何ら変わりがないのではないですか?」と述べて項羽をとがめました。

こは正論だったので項羽も反論できず、宴席への参加を許し、「それほど沛公の身が心配なら、席につくがよい」と勧めるのみでした。

こうした状況の変化を見逃さず、劉邦は厠(トイレ)に行くふりをして宴席を抜け出し、そのまま自軍の陣地にまで逃げ帰ってしまいました。

項羽が樊噲の説いた理を受け入れたので、もはや謝罪の必要もなくなったと判断したのでしょう。

張良が後をとりつくろい、范増は怒りに震える

張良は劉邦が酒に酔ってしまったために先に退出しました、と説明して項羽に謝罪した上で、たくさんの宝物を贈って項羽の機嫌を取り結びました。

そして樊噲とともに退出し、こちらも無事に劉邦の元に帰還しています。

項羽は贈り物を受け取って上機嫌で退出しましたが、後に残った范増は、怒りに震えていました。

劉邦を排除する絶好の機会を逃し、項羽の甘さによって将来の禍根を残してしまったことに激怒し、「あんな小僧とでは、天下を謀ることなどできぬ」と吐き捨てます。

そして剣を抜いて劉邦からの贈り物を打ち砕き、「いずれ天下は劉邦に奪われ、我々は捕虜としてつながれることになるだろう」と嘆きました。

こうして鴻門の会では、項羽が持つ、情にほだされてしまう人格的な欠点がはっきりと浮かび上がり、天下を治める器の持ち主ではないことが露呈しています。

なお、劉邦は自陣への帰還後に、すぐに讒言をした曹無傷を処刑しました。

項羽が秦王らを殺害する

こうして劉邦を屈服させた項羽は、軍勢を率いて咸陽に入りました。

そして降伏した秦王・子嬰だけでなく、数千人の秦の官吏たちを処刑し、宝物を奪い、宮殿を焼き払いました。

その上、始皇帝の墓を暴いた上で略奪までしており、秦の住民たちから強い反感を受けることになります。

こうした項羽の乱暴なふるまいによって、子嬰の降伏を許し、宮殿にも宝物にも手をつけなかった劉邦への評価が、よりいっそう向上することになりました。

項羽が覇者となり、主を殺害する

項羽は反乱軍の本拠であった彭城に凱旋すると、「西楚せいその覇王」を名のって大陸の覇者となったことを宣言します。

そして主であった懐王には「義帝」という称号を贈った上で、辺境に領地を与えて遠ざけました。

しかし項羽は英布に命じ、後を追いかけさせて義帝を殺害しており、主殺しの汚名を背負うことにもなります。

これによって、後に劉邦が項羽を糾弾するための、大義名分を与える事になりました。

このあたりの項羽のふるまいは、政略的な失点を積み重ねるもので、とても大陸の主にふさわしいものであるとは言えませんでした。

項羽は政治的な能力がまるでない人物でしたが、その上、人の適切な助言に耳を貸す度量も持っておらず、このあたりも劉邦とは対照的な存在でした。

【次のページに続く▼】

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