劉備玄徳 関羽や張飛とともに漢の復興を目指した、三国志の英傑

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周瑜が死去し、蜀の攻略計画が頓挫する

周瑜は孫権に対し、益州(蜀)を占拠し、天下を南と北の二つに分け、曹操と雌雄を決するという戦略案を提示しました。

これは諸葛亮の天下三分の計を無効化し、呉が天下を握るための方策でした。

孫権がこれを承認したので、周瑜は南郡に戻って準備を進めますが、やがて病に倒れ、そのまま死去します。

これによって呉の動きはしばらく鈍りますが、劉備にとっては、強力な競争相手がいなくなったことになりました。

以後、呉は魯粛が主導する体制を取っていきます。

魯粛は劉備に好意的で、なにかと便宜を図ってくれたので、劉備にとっては都合のよい展開となりました。

蜀の争奪戦

その後、孫権は劉備に対し、協力して蜀を取ろうと申し出てきました。

ある者が「呉が荊州を越えて蜀を支配することは不可能なのですから、承知すると答えた方がよいでしょう。蜀は結局、我らのものにすることができます」と意見を述べます。

すると荊州主簿しゅぼ(事務長)の殷観いんかんが進み出て、「もしも呉の先駆けとなり、進軍して蜀に勝つことができず、撤退して呉につけこまれることになれば、大事は去ってしまいます。

いまは言われる通りに、蜀の討伐に賛成しておき、われわれは新たに諸郡を支配したところなので、すぐに動くことはできないと説明なさいませ。

呉はあえて我らの領土を越え、単独で蜀を取るようなことはしないでしょう。

このように進退について計略を立てますれば、呉・蜀の双方から利益を収めることができます」

劉備がこの意見を採用すると、果たして孫権は計画を中止しました。

劉備は殷観の働きを評価し、別駕従事(荊州の幕僚筆頭)に昇進させています。

この事例からも、劉備陣営に、智謀に長けた者たちが増えていたことがうかがえます。

張松が動き出す

こうして劉備と孫権は、蜀をめぐる駆け引きをしていましたが、当時の蜀の支配者は、劉璋でした。

彼は惰弱かつ暗愚な性質で、かつお人好しであり、乱世の中で一州を保っていくだけの才能は持ち合わせていませんでした。

このため、放っておけばいずれ曹操に蜀を取られてしまう可能性が高く、劉備も孫権も蜀を自分の勢力に取りこんでしまおうと考えていたのです。

一方で、蜀の内部でも劉璋に対する不満は高まっており、劉璋の重臣である張松ちょうしょうは、劉備を蜀に呼ぼうと考えるようになっていました。

張松と劉備

張松は赤壁の戦いが始まる前に、曹操に会いに行ったことがありました。

そして曹操と同盟を結びたいと伝えたのですが、荊州の攻略があっさりと成功したせいか、おごり高ぶっていた曹操は、張松を粗略に扱って怒らせてしまいます。

これによって曹操は、天下を統一する機会を逃したのでした。

もしもこの時、張松を丁重に扱っていたら、蜀が建国されることはなかったからです。

張松はその後、赤壁の戦いに勝利した劉備に会いに行き、曹操とは反対に、厚遇を受けました。

劉備の武名が多いに高まっていた時期ですし、その上、実際に会ってみて人柄も優れているのを知り、張松は劉備こそが蜀の支配者にふさわしいと考えるようになっていきます。

このため、仲がよい法正ほうせいと話し合い、劉備に蜀を取らせるため、策謀を巡らせ始めました。

曹操が漢中を攻撃するという噂が流れる

211年になると、曹操が配下の鍾繇しょうように命じ、漢中に向かわせて張魯を討伐させようとしている、という情報が蜀に伝わってきました。

漢中は蜀の北東にあり、首都圏とつながっている地域ですので、ここが占拠されると、いよいよ曹操が侵攻してくる可能性が高まります。

劉璋はこれを聞くと、恐れおののきました。

張松はこの機会をとらえ、劉璋に次のように言います。

「曹操の軍は強力で、天下に敵はいません。

もしも張魯が蓄えた物資を用い、蜀を取ろうとしたならば、誰が防ぐことができましょうか」

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